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Random Thoughts on BJJ, Pro Wrestling, MMA, etc.
Tuesday, March 02, 2004
ペドロが闘った!
日曜のコパ・パシフィカ。会場に行ってみたら、昔の道場仲間がいたので少し話す。で、そいつが「今日ペドロ(うちのせんせ)が黒帯スーパーファイトに出るんだろ」とか言ってくる。そんなん聞いてないので「まさか」と笑ったが、彼はうちの支部長のロメール(ペドロの片腕みたいなもん)からさっき聞いたと言う。で、会場にいる他のうちの連中に聞いてみたら、やっぱりペドロは闘うらしいと言っている。んなこと言ったって、ペドロは事前にそんな素振りすらみせてなかったんだが。今回の大会前だって、うちの道場の練習はまったくいつも通りで、ペドロもごくふつうに我々生徒とスパーリングしては、適度にタップを取っていただけ。いったいどーなってんの・・・と思ったら、なんでも金曜の深夜に、相手がいるので出ないかと聞かれて、じゃ分かったやるよ、とOKしたとか。
ペドロの試合を見たのは、4年以上前、俺が入門してすぐの時以来。この時は柔術マッチでなくて、Kage Kombat というロスの果てのクラブでやってる不法イベントだった。この時もそんな話はまったく聞いてなくて、ていうか試合後はじめて聞いた。月曜に道場に行ったら、なにやらみんなが集まってヴィデオを見ようとしてるので、俺も加わってみた。そしたら、画面でペドロがいきなりケージの中にいる。「なにこれ、いつのイベント?」と聞いてみたら「昨日の夜だよ」と答えが帰って来てびっくり。土曜に主催者から電話が来て、日曜はヒマだったのでOKしたという。ペドロはどっかのレスラー相手にガードを取って、超落ち着いた顔で機を見てスイープでひっくり返してマウントし、テキトーに腹を殴って(確か顔面パンチは反則だったと思う)相手がうつぶせになったらチョークを極めた。道場のスパーリングと同じような顔と態度でやってた。
で、それからずーっと、ペドロは特に理由もなく試合をしてこなかった。たまにうちの生徒の間で「今度の大会こそペドロが闘うらしい」みたいな噂が立つことがあって、そのたびにペドロに「試合出るの?」聞いてみると、例のニヒルな顔で笑いながら「Maybe」と答えてくれるんだが、結局いつもやらないで終わっていた。実際こないだも書いたように、ペドロは生徒を試合に勝たせることにすら興味を持たず、会場にもあまり顔を出さない(機会があれば試合ばっかり出てる俺の場合、ペドロがセコンドに付いてくれるのはせいぜい10回に1回がいいところ)。そんななので、正直俺はペドロの試合を生で見る機会は一生無いと思ってたし、たぶん今日も会場にすら来ないだろうと思ってた。
そこでいきなりコレなので、正直(いくら試合が予定されてると聞いても)、実際にペドロが会場に入って来て、この耳で本人から確認するまでは俺は信じられなかっただよ。でもって、この日はいつも日曜練習会でお世話になっているタカさん(おそらく日本人で木村正彦以来初めて、柔術黒帯から柔術マッチで一本勝ちした男。その伝説の試合のことは、もうすぐ表に出るよきっと)も強豪フランジーニャとスーパーファイトをやるし、自分もたぶん現在アメリカの紫ペナ級で一番強い選手と試合することになったので、個人的にはもー「ありえない」というか、非現実的な一日となった。
ま、俺の試合のことは別にいいとして(そら負けたって。でもスイープもパスもマウントもされなかったし、最後には極めるチャンスを作ったよ)、ペドロの試合について書きましょ。試合展開以外の注釈を*をつけて入れることにします。
相手はマチャド(?)の新黒帯のトロとか言う人。全然知らないが体格はけっこうずんぐりむっくりで、なんかペドロと近い。ペドロは案の定、いつものスパーリングとあまり変わらん顔をしている(気合いは入ってるみたいだが)。で、試合が始まるとペドロはすぐさま引き込んでクローズドガードに。
*正直俺には「なんで?」って感じも。ペドロは下も強くてパスなんかとてもできないが、たぶん上はもっと強い。けっこう下が好きな弟のホドリゴ(新黒帯)のガードをいつも上からつぶしてパスしてる。柔道もけっこう強い(うちに来てる柔道選手をころころ投げてる)から、立ち技やれば上になれるだろうに。
ともかくペドロはそのままクローズドをじっくり固めて、右手を相手のエリに対角線に差し込んで、万力でじっくりクロスチョーク(十字締め)狙い。いわばエリオ・グレイシー以来のオーソドックスなクローズドガード戦法。
*これはペドロらしい。ペドロの柔術ってのは基本的に「身を守ること」が最優先。いつも生徒に、試合においてはポイントでの勝ち負けなんかこだわる必要はない、それより「タップを取られずに試合を終えること」ができればいいと言うし、危険を犯してまで一本を狙う必要などもないと説く。試合でたまーにセコンドに付いてくれる時にその言葉に耳を傾けても、(他の道場の師範達とちがって)ポイントを稼げ、みたいな指示は一切ない。具体的にどう守るか、どうパスするか、どうポジションをキープするかってことばかり。普段の練習時によく言うのは、「まずポジションだ。いいポジションを取れば、サブミッションは自然に付いてくるもんだ。」 で「オープンガードよりクローズドガードの方がいい。足をクローズしていれば、相手はそれを開かせなない限り、お前からタップを取ることはできないだろう。」 ペドロはオープンガード(たいていは片エリ片ソデを持つオーソドックスなやつ)もよく自分から使うけど、そんな時は生徒にしばしば「これは練習としてやっているだけで、基本はクローズドだ。」と断りを入れる。
で、ペドロはこの安全な(?)ポジションからゆっくりゆっくり締めを狙う。写真を見ると、スパーの時みたく目をつぶってやっている。で、相手のトロは基本的には首をすぼめたり、腕で突き放そうとしたりでディフェンスに徹している。ペドロの万力チョークを防いでいるんだから、さすがに地力と確かなベースがあるようだ。で、たまにトロが立ち上がってペドロのガードをこじ開けようとすると、ペドロは少しオープンガードを使って対応しては(それも、例の片エリ片ソデと、あと「相手のバックを狙わないデラヒーバ」という一番確実なのを使ってる)またクローズドに戻る。それにしても動きがないちゅーか、とんでもなく重厚な試合だ。俺みたいな直接の関係者には、どんな小さなアクションもハラハラドキドキだけど、そーでない観客にとっては、たいていの場合退屈な黒帯スーパーファイトの中でも、これは最凶な部類だろう。観客達には気の毒だが、こんな展開のまま試合は終盤まで続く。
*そもそもペドロには「見ている者を退屈させないようにしよう」という発想は皆無だ。これもふだんの練習でもそう。うちのスパーは基本的にペドロが全部組み合わせを指名するんだけど、たまにペドロが一人で道場生達を順番に六分ずつ相手していって、他の生徒はずーっと見てるだけ、ってことがある。そういう場合、例えば六人目まで相手に指名されなかった人は、ウォームアップした体が冷える中、30分間ただ見てるだけだったりする。いくら「黒帯の動きを見て学ぶことが重要だ」とか言われても、これはキビしい。俺は最近になってやっとペドロの技を盗むことの重要性に気付いて、その動きを熱心に見てるけど、入門して3年くらいは、万力のペドロの技を俺が見ても真似できないと思って、ひたすら退屈してた。また、そんなふうにして待ってても、結局4、50分のスパーリングタイムで一回しかスパーできず、あとは見てるだけだったりすることもある。うちを辞める理由にこれを挙げる者も多い(さすがに紫帯になるとこういう仕打ちはあまり受けないが、白帯の頃はざらだ。それもあって俺は、なるたけクラス終了後も毎回残って、フラストレーションの残る白帯たちのスパー相手をするよーにしてる。かつて、そーやって俺と練習してくれた先輩たちがいたし)。
で、残り数十秒のところで。もう一度ペドロのガードの中から立ち上がったトロは、アキレス狙いで後方に倒れ込む。ペドロはなんかヒールで逆襲している(柔術ではいくら黒帯マッチでも反則だと思うんだが)。そのまま両者極められずに試合終了・・・。
*実はヒールはクロスチョークと並ぶペドロの一番の必殺技で、俺とかがたまにスパー終了直前までタップを取られずに粘れたりすると、ペドロはたいていこれで極めに来る(ペドロはもちろんいつも適度に手加減してくれるけど、一回のスパーで、生徒から最低一度は取るのがペドロ的には原則みたい)。うちのスパーリングにおいては、競技柔術においてどの技が反則とか、そーゆーのはあまり考慮されない。
立ち上がったとき、ペドロはなんか片手を挙げていた。まあ試合時間の大半をクロスチョークぐりぐり狙いで攻めてたので、勝ったつもりなんだろう。でも、その直後にレフェリーのクレバーが、トロの方にアドヴァンを一個入れる仕種。そしてトロの手を挙げる。ありゃ、負けにされちゃったよ。ペドロはちょっと不満そうにクレバーに説明を求めてるし、ヴィデオを撮っていたうちの指導員のエミリオ(茶帯)は、もっと激しくなんかクレバーに抗議している・・・
----
でもこりゃしょーがないよ。そりゃペースを握って攻めてたけど、アドヴァンがもらえるほど深くクロスチョークが入った場面はなかったし、最後にアキレスとヒールを取り合ったら、そらアキレスの方にアドヴァンが入って然るべきだろう。だってヒール反則だもん(笑)。ペドロにアキレスが極まらないのは、さんざん仕掛けている俺がよく知っている(って、黒帯のアキレスと同じにしちゃいかんか)。たぶん別に危なくはなかったんだろう(いや、もしかしたらちょっとヤバかったから、思わずヒールに行っちゃたのかも知れんが)。
でも柔術マッチはポイントを競う競技でもあるので、ポイントを稼ぐための動きをした方が勝ちになるのはしょーがない。柔術を第一義的に護身と考えるペドロには、そういう動きにあまり価値はないんだろーが。ってことでま、ペドロ的には自分の哲学通りに試合を進めて、一度も危ない場面がなかったわけだから、それでいいんじゃないかな? 試合を重要視しないペドロ。特に試合が嫌いなわけでも、負けるのがイヤで試合をしなかったわけでもなく、必然性がなかったから、このところやらなかっただけなんだろう。戦いならいつも道場でやっているからな。ペドロは生徒の誰とでもスパーリングするし、見知らぬ体験入門者(NHB系の強いのもたまに来る)が来ると、必ずまず自分が直々に相手をする。そんなペドロの柔術の延長として、今回は機会があったから試合をやって、まあ自分の柔術に沿った試合はできたんだろう。
ただ、(本人も分かってる通り)そんなペドロの柔術哲学は、みんなが競技のほうに目を向けている現在の傾向にはそぐわない。競技柔術ではポイントを取ることが重要だし、安全な体勢で動かないよりは、危険を犯して攻めてゆくことが奨励される(そういうふうにルールができている)。俺はペドロの試合をハラハラ楽しめただけでなく、後から考えても「やっぱこれがペドロの柔術だよな」と納得できるけど、一般の客にはアレは単なる拷問だろう。また、俺は(もちろん黒帯の攻防を十分に理解できるとは思わないが)、ペドロの元で長くやってるので、あの試合を見れば、スパーをすればたいがいペドロがトロから取るんだろーな、と見当は付く。でも、うちの白帯達はどう思っただろう? そー考えると、やっぱこのくらいの相手には勝利という結果を出してほしかったとも思う(でもま、うちの柔術はこーゆー試合にこだわらない柔術だから、離れるヤツはいずれ離れるのだが)。
試合後ペドロに話しかけたら、苦笑して「I got robbed, man.(勝ちを盗まれちまったよ)」だって。これは判定に不満のある時の常套表現なわけだけど(で、たぶんペドロもそういう意味で言ったんだろうが)、今回に関しては、レフのクレバーに盗まれたというよりは、最後にポイント稼ぎをやってのけた相手のトロにまんまと盗まれた、ってのが正しいと思う。トロの立派な勝ちだ。たぶんトロはペドロよりは弱い。でも、多少実力で劣っていても、うまく勝利を取れちゃったりするのが競技柔術。俺はそんな競技柔術にハマってるわけだけど、そこで自分がもっと強くなるために必要なのは(ポイント稼ぎ術ではなく)ペドロの技を盗むことだと知っている。
ペドロの試合を見たのは、4年以上前、俺が入門してすぐの時以来。この時は柔術マッチでなくて、Kage Kombat というロスの果てのクラブでやってる不法イベントだった。この時もそんな話はまったく聞いてなくて、ていうか試合後はじめて聞いた。月曜に道場に行ったら、なにやらみんなが集まってヴィデオを見ようとしてるので、俺も加わってみた。そしたら、画面でペドロがいきなりケージの中にいる。「なにこれ、いつのイベント?」と聞いてみたら「昨日の夜だよ」と答えが帰って来てびっくり。土曜に主催者から電話が来て、日曜はヒマだったのでOKしたという。ペドロはどっかのレスラー相手にガードを取って、超落ち着いた顔で機を見てスイープでひっくり返してマウントし、テキトーに腹を殴って(確か顔面パンチは反則だったと思う)相手がうつぶせになったらチョークを極めた。道場のスパーリングと同じような顔と態度でやってた。
で、それからずーっと、ペドロは特に理由もなく試合をしてこなかった。たまにうちの生徒の間で「今度の大会こそペドロが闘うらしい」みたいな噂が立つことがあって、そのたびにペドロに「試合出るの?」聞いてみると、例のニヒルな顔で笑いながら「Maybe」と答えてくれるんだが、結局いつもやらないで終わっていた。実際こないだも書いたように、ペドロは生徒を試合に勝たせることにすら興味を持たず、会場にもあまり顔を出さない(機会があれば試合ばっかり出てる俺の場合、ペドロがセコンドに付いてくれるのはせいぜい10回に1回がいいところ)。そんななので、正直俺はペドロの試合を生で見る機会は一生無いと思ってたし、たぶん今日も会場にすら来ないだろうと思ってた。
そこでいきなりコレなので、正直(いくら試合が予定されてると聞いても)、実際にペドロが会場に入って来て、この耳で本人から確認するまでは俺は信じられなかっただよ。でもって、この日はいつも日曜練習会でお世話になっているタカさん(おそらく日本人で木村正彦以来初めて、柔術黒帯から柔術マッチで一本勝ちした男。その伝説の試合のことは、もうすぐ表に出るよきっと)も強豪フランジーニャとスーパーファイトをやるし、自分もたぶん現在アメリカの紫ペナ級で一番強い選手と試合することになったので、個人的にはもー「ありえない」というか、非現実的な一日となった。
ま、俺の試合のことは別にいいとして(そら負けたって。でもスイープもパスもマウントもされなかったし、最後には極めるチャンスを作ったよ)、ペドロの試合について書きましょ。試合展開以外の注釈を*をつけて入れることにします。
相手はマチャド(?)の新黒帯のトロとか言う人。全然知らないが体格はけっこうずんぐりむっくりで、なんかペドロと近い。ペドロは案の定、いつものスパーリングとあまり変わらん顔をしている(気合いは入ってるみたいだが)。で、試合が始まるとペドロはすぐさま引き込んでクローズドガードに。
*正直俺には「なんで?」って感じも。ペドロは下も強くてパスなんかとてもできないが、たぶん上はもっと強い。けっこう下が好きな弟のホドリゴ(新黒帯)のガードをいつも上からつぶしてパスしてる。柔道もけっこう強い(うちに来てる柔道選手をころころ投げてる)から、立ち技やれば上になれるだろうに。
ともかくペドロはそのままクローズドをじっくり固めて、右手を相手のエリに対角線に差し込んで、万力でじっくりクロスチョーク(十字締め)狙い。いわばエリオ・グレイシー以来のオーソドックスなクローズドガード戦法。
*これはペドロらしい。ペドロの柔術ってのは基本的に「身を守ること」が最優先。いつも生徒に、試合においてはポイントでの勝ち負けなんかこだわる必要はない、それより「タップを取られずに試合を終えること」ができればいいと言うし、危険を犯してまで一本を狙う必要などもないと説く。試合でたまーにセコンドに付いてくれる時にその言葉に耳を傾けても、(他の道場の師範達とちがって)ポイントを稼げ、みたいな指示は一切ない。具体的にどう守るか、どうパスするか、どうポジションをキープするかってことばかり。普段の練習時によく言うのは、「まずポジションだ。いいポジションを取れば、サブミッションは自然に付いてくるもんだ。」 で「オープンガードよりクローズドガードの方がいい。足をクローズしていれば、相手はそれを開かせなない限り、お前からタップを取ることはできないだろう。」 ペドロはオープンガード(たいていは片エリ片ソデを持つオーソドックスなやつ)もよく自分から使うけど、そんな時は生徒にしばしば「これは練習としてやっているだけで、基本はクローズドだ。」と断りを入れる。
で、ペドロはこの安全な(?)ポジションからゆっくりゆっくり締めを狙う。写真を見ると、スパーの時みたく目をつぶってやっている。で、相手のトロは基本的には首をすぼめたり、腕で突き放そうとしたりでディフェンスに徹している。ペドロの万力チョークを防いでいるんだから、さすがに地力と確かなベースがあるようだ。で、たまにトロが立ち上がってペドロのガードをこじ開けようとすると、ペドロは少しオープンガードを使って対応しては(それも、例の片エリ片ソデと、あと「相手のバックを狙わないデラヒーバ」という一番確実なのを使ってる)またクローズドに戻る。それにしても動きがないちゅーか、とんでもなく重厚な試合だ。俺みたいな直接の関係者には、どんな小さなアクションもハラハラドキドキだけど、そーでない観客にとっては、たいていの場合退屈な黒帯スーパーファイトの中でも、これは最凶な部類だろう。観客達には気の毒だが、こんな展開のまま試合は終盤まで続く。
*そもそもペドロには「見ている者を退屈させないようにしよう」という発想は皆無だ。これもふだんの練習でもそう。うちのスパーは基本的にペドロが全部組み合わせを指名するんだけど、たまにペドロが一人で道場生達を順番に六分ずつ相手していって、他の生徒はずーっと見てるだけ、ってことがある。そういう場合、例えば六人目まで相手に指名されなかった人は、ウォームアップした体が冷える中、30分間ただ見てるだけだったりする。いくら「黒帯の動きを見て学ぶことが重要だ」とか言われても、これはキビしい。俺は最近になってやっとペドロの技を盗むことの重要性に気付いて、その動きを熱心に見てるけど、入門して3年くらいは、万力のペドロの技を俺が見ても真似できないと思って、ひたすら退屈してた。また、そんなふうにして待ってても、結局4、50分のスパーリングタイムで一回しかスパーできず、あとは見てるだけだったりすることもある。うちを辞める理由にこれを挙げる者も多い(さすがに紫帯になるとこういう仕打ちはあまり受けないが、白帯の頃はざらだ。それもあって俺は、なるたけクラス終了後も毎回残って、フラストレーションの残る白帯たちのスパー相手をするよーにしてる。かつて、そーやって俺と練習してくれた先輩たちがいたし)。
で、残り数十秒のところで。もう一度ペドロのガードの中から立ち上がったトロは、アキレス狙いで後方に倒れ込む。ペドロはなんかヒールで逆襲している(柔術ではいくら黒帯マッチでも反則だと思うんだが)。そのまま両者極められずに試合終了・・・。
*実はヒールはクロスチョークと並ぶペドロの一番の必殺技で、俺とかがたまにスパー終了直前までタップを取られずに粘れたりすると、ペドロはたいていこれで極めに来る(ペドロはもちろんいつも適度に手加減してくれるけど、一回のスパーで、生徒から最低一度は取るのがペドロ的には原則みたい)。うちのスパーリングにおいては、競技柔術においてどの技が反則とか、そーゆーのはあまり考慮されない。
立ち上がったとき、ペドロはなんか片手を挙げていた。まあ試合時間の大半をクロスチョークぐりぐり狙いで攻めてたので、勝ったつもりなんだろう。でも、その直後にレフェリーのクレバーが、トロの方にアドヴァンを一個入れる仕種。そしてトロの手を挙げる。ありゃ、負けにされちゃったよ。ペドロはちょっと不満そうにクレバーに説明を求めてるし、ヴィデオを撮っていたうちの指導員のエミリオ(茶帯)は、もっと激しくなんかクレバーに抗議している・・・
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でもこりゃしょーがないよ。そりゃペースを握って攻めてたけど、アドヴァンがもらえるほど深くクロスチョークが入った場面はなかったし、最後にアキレスとヒールを取り合ったら、そらアキレスの方にアドヴァンが入って然るべきだろう。だってヒール反則だもん(笑)。ペドロにアキレスが極まらないのは、さんざん仕掛けている俺がよく知っている(って、黒帯のアキレスと同じにしちゃいかんか)。たぶん別に危なくはなかったんだろう(いや、もしかしたらちょっとヤバかったから、思わずヒールに行っちゃたのかも知れんが)。
でも柔術マッチはポイントを競う競技でもあるので、ポイントを稼ぐための動きをした方が勝ちになるのはしょーがない。柔術を第一義的に護身と考えるペドロには、そういう動きにあまり価値はないんだろーが。ってことでま、ペドロ的には自分の哲学通りに試合を進めて、一度も危ない場面がなかったわけだから、それでいいんじゃないかな? 試合を重要視しないペドロ。特に試合が嫌いなわけでも、負けるのがイヤで試合をしなかったわけでもなく、必然性がなかったから、このところやらなかっただけなんだろう。戦いならいつも道場でやっているからな。ペドロは生徒の誰とでもスパーリングするし、見知らぬ体験入門者(NHB系の強いのもたまに来る)が来ると、必ずまず自分が直々に相手をする。そんなペドロの柔術の延長として、今回は機会があったから試合をやって、まあ自分の柔術に沿った試合はできたんだろう。
ただ、(本人も分かってる通り)そんなペドロの柔術哲学は、みんなが競技のほうに目を向けている現在の傾向にはそぐわない。競技柔術ではポイントを取ることが重要だし、安全な体勢で動かないよりは、危険を犯して攻めてゆくことが奨励される(そういうふうにルールができている)。俺はペドロの試合をハラハラ楽しめただけでなく、後から考えても「やっぱこれがペドロの柔術だよな」と納得できるけど、一般の客にはアレは単なる拷問だろう。また、俺は(もちろん黒帯の攻防を十分に理解できるとは思わないが)、ペドロの元で長くやってるので、あの試合を見れば、スパーをすればたいがいペドロがトロから取るんだろーな、と見当は付く。でも、うちの白帯達はどう思っただろう? そー考えると、やっぱこのくらいの相手には勝利という結果を出してほしかったとも思う(でもま、うちの柔術はこーゆー試合にこだわらない柔術だから、離れるヤツはいずれ離れるのだが)。
試合後ペドロに話しかけたら、苦笑して「I got robbed, man.(勝ちを盗まれちまったよ)」だって。これは判定に不満のある時の常套表現なわけだけど(で、たぶんペドロもそういう意味で言ったんだろうが)、今回に関しては、レフのクレバーに盗まれたというよりは、最後にポイント稼ぎをやってのけた相手のトロにまんまと盗まれた、ってのが正しいと思う。トロの立派な勝ちだ。たぶんトロはペドロよりは弱い。でも、多少実力で劣っていても、うまく勝利を取れちゃったりするのが競技柔術。俺はそんな競技柔術にハマってるわけだけど、そこで自分がもっと強くなるために必要なのは(ポイント稼ぎ術ではなく)ペドロの技を盗むことだと知っている。